第16回大会記

北海学園大学教授 菅原浩信 
(2012.8.25-26 北星学園大学)


統一論題 地域活性化と非営利活動


 非営利法人研究学会第16回大会は、2012年8月25日(土)〜26日(日)の2日間にわたり、北星学園大学を会場に開催され、会員を含め約90名の参加者があった。なお、前日の8月24日(金)には、常任理事会および理事会が開催された。

【1日目】
 大会1日目(25日)は、北星学園大学の田村信一学長からの挨拶の後、総会が開催された。大会委員長及び会長からの挨拶、会務報告(新入会員の紹介、学会誌VOL.14の発行、平成23年度事業報告)、第11回学会賞・学術奨励賞・学術奨励特賞の審査結果報告、事辞典刊行事業の報告が行われた。その後、平成23年度収支決算案、平成25年度事業計画・収支予算案、会則の改正、理事等の任期満了に伴う改選等の審議が行われた。
 総会終了後、引き続き統一論題「地域活性化と非営利活動」の報告・討論(司会:樽見弘紀氏(北海学園大学))が行われた。統一論題の報告では、以下の3名の報告者から報告が行われた。

 第1報告として、杉岡直人氏(北星学園大学)による「地域活性化と地方自治体の取り組み:北海道における自治体とNPOのパートナーシップの実際から」についての報告が行われた。北海道における行政とNPOのパートナーシップの状況が報告されるとともに、行政とNPOのパートナーシップを推進するための要件が示された。また、先駆的な福祉NPOの事例として、「ネットワークサロン」「べてるの家」の紹介があった。
 第2報告として、早瀬京太氏(北海道経済部経営支援局中小企業課中小企業支援グループ主幹)による「行政の視点からみた非営利活動と地域活性化−住民参加型まちづくり事業の効果と課題−」についての報告が行われた。住民参加型プログラムの事例として「マッチングファンド」(シアトル市)、「企画提案制度」「サイクリングロードアート事業」(札幌市厚別区)が紹介されるとともに、住民参加型プログラムにおける効果と課題が示された。
 第3報告として、河西邦人氏(札幌学院大学)による「社会的企業による地域活性化」についての報告が行われた。北海道における社会的企業の事例として「ねおす」「ネットワークサロン」「西神楽グラウンドワーク」の3つをあげ、それらの活動内容等をふまえ、ソーシャルビジネスの創出における2つのメカニズムが提示されるとともに、社会的企業が地域活性化を実現するための要件が示された。

 報告終了後、休憩をはさんで討論が行われた。討論では、ここ10年来、北海道でNPOの成功事例が新たに出現していない背景、人口減少や高齢化が進展する中での住民参加型プログラムのあり方、厚別区の事業名に「資金」が入っていない理由、ソーシャルビジネスの定義づけ、営利企業のCSRとソーシャルビジネスの関係、社会的成果と経済的成果のトレードオフ、社会的企業と社会的ネットワークの関係、「ボランタリーの失敗」への対応等、様々な論点が出され、活発な議論が行われた。
 統一論題報告・討論終了後、北星学園大学学生会館にて懇親会が行われた。

【2日目】
 大会2日目(26日)は、午前中に自由論題報告が行われた。自由論題は、3つの会場に分かれ、計15本の報告が行われた。各会場の報告者および論題は、以下の通りである。
●第1会場(司会:⑴〜⑶千葉正展氏(独立行政法人福祉医療機構)、⑷〜⑸今枝千樹氏(愛知産業大学))
⑴ 深山誠也氏(北海道大学大学院)「社会福祉法人の戦略と組織−高齢者介護組織を対象とする実証研究−」
⑵ 山口忠保氏(東北公益文化大学大学院)「自治体の公共交通政策の現状と課題−小山市のコミュニティバス運行の事例を中心に−」
⑶ 源田佳史氏(公認会計士)「NPO法人の農業参入について−NPO法人の農業参入の可能性と限界−」
⑷ 林孝之氏(厚別区介護予防センターもみじ台)「NPOが地域のサロン活動の担い手となることの意義」
⑸ 湯上千春氏(東京工業大学)「福祉ワーカーズ・コレクティブの持続的な発展要因の事例分析」
●第2会場(司会:⑴〜⑶江田寛氏(公認会計士・税理士)、⑷〜⑸会田一雄氏(慶応義塾大学))
⑴ 神保集氏(国士舘大学大学院)「一般社団法人の基金について−基金の会計的な性質−」
⑵ 水谷文宣氏(慶応義塾大学大学院)「香港の民間非営利組織会計実務−会計基準の不在と新法案」
⑶ 早坂毅氏(税理士)「遺贈・相続による寄付の仕組みに関する調査・研究」
⑷ 村山秀幸氏(公認会計士)「平成20年度公益法人会計基準の会計間取引と公益目的取得財産残額への影響」
⑸ 馬場英朗氏(愛知学泉大学)「NGOの監査とガバナンス−資金拠出制度による指導機能と私的自治」
●第3会場(司会:⑴〜⑶小島廣光氏(札幌学院大学)、⑷〜(⑸平本健太氏(北海道大学))
⑴ 伊藤葵氏(早稲田大学大学院)「公民連携におけるインターミディアリーの重要性」
⑵ 野口寛樹氏(京都大学大学院)・定松功氏(龍谷大学)・大石尚子氏(龍谷大学)「大学を中心とした産官学民連携による地域活性化〜亀岡カーボンマイナスプロジェクトの事例を中心に」
⑶ 今井良広氏(兵庫県)「公有資産のコミュニティ移転−英国の事例から−」
⑷ 小熊仁氏(金沢大学)「わが国の観光分野における公民間コラボレーションの検討と非営利組織の役割」
⑸ 初谷勇氏(大阪商業大学)「地域共治組織の制度設計と市民社会組織(CSO)の再編」

 午後からは、栗田敬子氏(NPO法人エコ・モビリティサッポロ代表)による講演「人をつなぐベロタクシー」が行われた。講演では、札幌でのベロタクシーの現状、全国での運行状況、札幌で運行しようと思った理由、事業化に向けた課題とその解決方策、今後の可能性等について、具体的な説明が行われた。
 講演終了後、部会報告が行われた(司会:原田満徳氏(松山大学))。東日本部会からは「日本及び諸外国における非営利法人制度に関する研究−制度史・制度設計・報告制度・税制度等を中心として−」(岡村勝義氏(神奈川大学)、古庄修氏(日本大学)、金子良太氏(国学院大学))について、西日本部会からは「地域における行政、医療及び福祉の現状と課題」(森美智代氏(熊本県立大学)、澤田道夫氏(熊本県立大学)、黒木誉之氏(熊本県立大学)、河谷はるみ氏(九州看護福祉大学))について、それぞれ研究の進捗状況等の報告が行われた。
 最後に、大会委員長からの閉会挨拶が行われ、盛況のうちに閉幕した。