第14回大会記

公認会計士 清水貴之 
(2010.9.25・26 早稲田大学)


統一論題 非営利法人制度改革と市民社会ガバナンス


 非営利法人研究学会の第14回大会は、2010年9月25日・26日の両日、早稲田大学8号館(大会委員長:小林麻理氏)において開催され、100名を超える会員が参集した。その前日(9月24日)には常任理事会及び理事会が開かれた。 大会1日目は事辞典刊行委員会、会員総会に引き続き、本大会の統一論題「非営利法人制度改革と市民社会ガバナンス」に関するキーノートスピーチの後、パネリストよりそれぞれの立場から報告が行われ、柴健次氏(関西大学)の司会の下に討論が行われた。

【統一論題報告と討論】
 キーノートスピーチは、大内俊身氏(元東京高等裁判所民事部総括判事・前内閣府公益認定等委員会委員)が「非営利法人制度の現状と課題」について行った。旧民法法人(公益法人)制度に対する批判と、そうした課題に対応した主たる立法の動きについて触れた後、新しい非営利法人制度の概要として、一般法人と公益法人の内容及び先の課題が解消されたか等について述べられた。旧民法法人制度において問題であった権利能力のない社団・財団が、準則主義の採用により一般法人としての設立が可能となった点は、画期的なことであると指摘された。
 統一論題報告では、吉田忠彦氏(近畿大学)氏が、ガバナンス論の観点から「社会ガバナンスとNPO」について報告した。ガバナンス論には、政府によるコントロールの修正又は代替方法としての国家単位のネットワーク・ガバナンス論とマネジメントの上位概念としての組織単位のコーポレート・ガバナンス論があると分類した上で、現在、ガバナンスが問題となっているのは中央政府が機能不全を来していることが原因であるとした。
 入山映氏(サイバー大学)は、市民セクターの社会における重要性を強調する観点から、「公益法人制度改悪 その根底にあるもの」について報告した。その中で公益とは、現在の公益法人制度においては、非営利かつ不特定多数とされているが、ガバナンスとは自分のことは自分で決め、その上で責任も自分で取るということであり、そもそも公益概念への適否の枠組みを政府が決定すること自体が間違っていると指摘した。公益概念に基づく現公益法人制度は廃し、非営利法人という制度に一本化すべきであると提言された。
 髙山昌茂氏(公認会計士)は、予算がガバナンスにおいて果たす機能の観点から「公益法人制度改革とガバナンス 損益予算について」の論題で報告した。公益法人の予算に関する取扱いは、昭和52年策定の会計基準及び昭和60年会計基準の予算準拠主義による収支予算書から、平成16年会計基準の内部管理事項としての収支予算書、そして、平成20年会計基準の損益予算へと変遷してきたが、損益予算ではガバナンスの観点からは限界があり、公益法人にとって真に必要な予算とは収支予算ではないかと指摘された。
 討論においては、今般の公益法人制度改革において、準則主義による法人設立の意義については共通の認識が得られたものの、公益認定制度のあり方やNPO法人との関係などについて活発な質疑・討論が行われた。

【自由論題報告】
 大会2日目午前中は、4会場に分かれて15の自由論題報告が行われた、各会場の報告者及び論題は以下のとおりである。
第1会場[司会:齋藤真哉氏(横浜国立大学)
 ⑴村山秀幸氏(公認会計士)「公益認定法の収支相償規定の意味と実務的対応の検討」、⑵竹内拓氏(自由が丘産能短期大学)「ファンドレイジングの変遷とその対応策」、⑶田中弥生氏(大学評価・学位授与機構)/馬場英朗氏(愛知学泉大学)/石田祐氏(明石工業高等専門学校)「新しい公共と税制優遇―認定NPO 法人は寄付文化を促進するか?―」
第2会場[司会:会田一雄氏(慶応義塾大学)
 ⑴小野英一氏(東北公益文科大学大学院)「NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)を活かした非営利組織マネジメントについて」、⑵川野祐二氏(下関市立大学)「公益志向の近代市民結社とイノベーション:自治的アソシエーションの拡大と民主主義」、⑶八島雄士氏(九州共立大学)「行政とNPO の協働におけるバランスト・スコアカードの適用可能性」、⑷大原昌明氏(北星学園大学)/鈴木克典氏(北星学園大学)「『自転車タクシー事業の現状と課題』―事業者へのヒアリング調査に基づいて―」
第3会場[司会:江田寛氏(公認会計士)
 ⑴古市雄一朗氏(福山大学)「非営利組織の会計における貸借対照表の意義」、⑵馬場英朗氏(愛知学泉大学)「3省庁からみた民間非営利組織への事業積算―イコール・フッティングは考慮されているか?―」、⑶兵頭和花子氏(兵庫県立大学)「非営利組織の財務的基盤とその会計」、⑷佐久間義浩氏(富士大学)「非営利組織における内部統制の現状―公的医療機関における内部統制に関するアンケート調査による分析―」
第4会場[司会:富永さとる氏(パブリック・ベネフィット研究所)
 ⑴伊藤葵氏(早稲田大学大学院)「日本型地域プラットフォームの形成―行政とNPOの連携による効果的なガバナンスに向けて―」、⑵角谷嘉則氏(立命館大学)「ボランティアの専門性の高度化―障害者の就労支援を事例として―」、⑶東郷寛氏(近畿大学)「公民パートナーシップ(PPP)のマネジメント:先行研究レビュー」、⑷初谷勇氏(大阪商業大学)「非営利法人制度改革と市民社会の安全」

【特別講演】
 午後からは、田中羊子氏(ワーカーズコープセンター事業団・専務理事)による「『新しい公共』の創造と協同労働の可能性」と題する特別講演が行われた。田中氏は、協同労働の協同組合という新しい就労機会創出の仕組みとしてのワーカーズコープのこれまでの活動内容を紹介され、事業者が、利用者や地域と協同して事業を行なうことにより、「新しい公共」の場が創出されるとともに利用者や地域のニーズに合ったサービス提供が行われると指摘された。

【研究部会報告】
 特別講演の質疑終了後、東日本研究部会[主査:小林麻理氏(早稲田大学)]と西日本研究部会[主査:藤井秀樹氏(京都大学)]からそれぞれの部会報告が行われ、最後に大会準備委員長の小林麻理氏の閉会挨拶により盛況のうちに閉幕した。