第12回大会記

日本大学教授 堀江正之 
(2008.9.5-6 日本大学)


統一論題 非営利組織の業績測定・評価に関する多角的アプローチ


はじめに
 非営利法人研究学会第12回全国大会は、2008年9月5日・6日の両日、日本大学(準備委員長:堀江正之)において開催された。その前日(4日)には理事会が開かれ、事務局から会務報告のほか、総会提出のための前年度決算案・次年度予算案等の議案を承認した。
 1日目は総会に続いて統一論題報告と討議があり、2日目は自由論題報告・特別講演と研究部会報告が行われた。なお、今次大会の参加者は、当日申込みを含め101名であった。

【統一論題報告・討議】
 統一論題のテーマは「非営利組織の業績測定・評価に関する多角的アプローチ」であり、石崎忠司(中央大学)座長の下、報告と討議が進められた。
 どこの学会でも見受けられることであるが、「統一論題という名の自由論題」と揶揄されるように、各報告者が自らの関心テーマをほんの少々統一論題テーマに引っ掛けるだけのものとなりがちである。そのため今次大会は、堀田和宏氏(近畿大学名誉教授)が最初に登壇されて、討論のための「土俵」の確定が試みられた。
 堀田氏は、その前半で、まずもって「誰が、誰のために、何のために、どれの、どこを、どのように」測定・評価するかを確認して確定する必要があると指摘、「断片的な業績評価システムを首尾一貫した整合性あるシステムに統合する包括的業績評価システムのフレームワーク確立」の重要性を訴えられた。
その議論を受けて、堀田報告の後半では、BSCの4つの視点、CCAF(カナダ包括監査財団)の12の属性の視点、J.Cuttらの提言等を検討され、組織の持続性、組織の社会性、非営利組織における組織有効性のジレンマを小括とされ、再び「評価の本質とその限界の再考」、「非営利組織とは何か」に遡った検討の中で、多様なサービスの性質及び形態に適合する測定・評価フレームワークの構築を主張された。
 これに引き続き、第1報告として、梅津亮子氏(九州産業大学)が「サービスの原価と見えない価値」と題して、組織外のボランティアが組織に対して無償のサービスを提供する流れ(ボランティア→組織)、組織の職員がエンドユーザーに対して無償のサービスを提供する流れ(組織→エンドユーザー)という2つのパターンから、インプットとアウトプット関係の中で、原価測定と評価の枠組みの中に位置づけ、無償によるサービス活動を原価によって可視化し、活動内容を評価していくための仕組みを提案された。
 第2報告の今枝千樹氏(愛知産業大学)は、「非営利組織の業績報告」と題して、アメリカ政府会計基準審議会によって1994年に公表された概念書第2号の改訂公開草案と、公表された返答の要請について、かかる概念書の改訂部分と改訂の背景及びガイドラインの整理・検討に基づいて、政府組織を含む広義の非営利組織における業績報告のあり方について詳細な検討を加えられ、その内容及び設定過程についての検討が、我が国の政府機関における業績報告に係る議論の参考になると主張された。
 第3報告の齋藤真哉氏(横浜国立大学)は、「非営利組織の公益性評価—公益認定の基準を踏まえて—」と題して、新たな公益法人制度上の公益認定基準を取り上げて、非営利組織にとっての公益性の社会的意義とその評価について検討された。公益性は社会システムの中で支援する必要があるか否かにより評価し、公益性と税制優遇はリンクしている等のポイントを示され、単なる公益性評価ではなく、非営利組織の公益性評価というところを強調され、そこに非営利組織の存在意義を求める必要があると主張された。
 以上の報告に対し、座長の石崎氏より、積極的にフロアー、特に自由論題報告予定者のうち、今回の統一論題のテーマと関連深い方に意見が求められ、活発な討論が展開された。

【自由論題報告】
 自由論題報告は合計で18報告あり、紙幅の関係もあって、そのすべてを紹介できないが、院生会員の報告も3分の1強を占め、学会の将来的な活性化を感じさせるものであった。
 その内容も、非営利組織を巡るガバナンス・管理・会計・財務・税務・監査等の諸問題を広くカバーするものであった。大会では統一論題が重視される傾向にあるが、自らの地道な研究成果を披露する自由論題にこそ、本当に面白いものがあるように思わせる報告が多かった。

【特別講演・研究部会報告】
 今次大会では、本学会副会長の興津裕康氏(近畿大学名誉教授)による「企業会計と非営利の会計—財務会計研究からみた非営利組織の会計を考える—」、そして開催校側から勝山進氏(日本大学商学部部長)による「組織の環境会計」と題する特別講演が行われた。
 興津氏は、公益法人会計基準を中心に、非営利の会計を企業会計の視点から検討され、公益法人会計基準は企業会計基準に極めて類似してきたように思われるが、「これでよいのか、非営利の会計の色彩が失われてきているのではないか」と結ばれた。
 また勝山氏は、昨今その研究が急速に進められつつある環境会計の現状と課題について、国際動向を踏まえて整理され、自治体の環境会計、大学の環境会計などの事例も紹介されながら非営利組織への適用可能性を探られた。
 特別講演に続き、小林麻理氏(早稲田大学)を主査とする東日本研究部会報告が行われ、公益認定基準を巡る諸問題について、メンバーによる研究の成果報告が行われ、フロアーを交えた活発な意見交換が行われた。

おわりに
 非営利組織の業績測定・評価は、一息に「多様性あり」と言ってしまえばそれまでである。「多角的であること、多角的にならざるを得ないこと」を深く考えてみることに意味があるように思う。統一論題だけでなく、自由論題もともに直接・間接の違いはあるかも知れないが、基底において、いずれもこの問題に迫るものであった。
〈付記〉 本稿の執筆に際しては、大原大学院大学の江頭幸代氏のお力添えをいただいた。記して感謝したい。