第9回大会記

文京学院大学教授 依田俊伸 
(2005.9.9-10 神奈川大学)


統一論題 1 非営利組織の制度進化と新しい役割
2 非営利組織の失敗—その原因と予防装置—
3 公益法人制度改革で何が変わるか
4 非営利法人課税制度への提言


 公益法人研究学会第9回全国大会は、2005年9月9日(金)・10日(土)の日程で、神奈川大学において開催された。第1日目は、理事会の開催に充てられた。以下では、第2日目の研究報告大会の模様を中心に、学会の開催状況を紹介する。

1 自由論題報告
 4会場で行われ、以下の9題が報告された(氏名のカッコ内は所属機関)。
 第1会場〔司会:金川一夫氏(九州産業大学)〕⑴東郷寛氏(公共・非営利組織研究フォーラム)「イングランドの官民協働における非営利組織の役割」、⑵今井良広氏(兵庫県健康生活部)「英国における地域協定(LAAs)の意義と役割—非営利組織の活動基盤としての可能性—」、⑶兵頭和花子氏(兵庫県立大学)「非営利組織体の情報開示—非営利組織体のミッション評価の必要性とその実態—」

 第2会場〔司会:吉田初恵氏(関西福祉科学大学)〕⑴永島公孝氏(筑波大学大学院)「非営利法人における委員会手当の所得区分」、⑵成田伸一氏(社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター)「社団法人における賛助会員に関する考察」、⑶小笠原修身氏(社会福祉法人ふじの郷さつき学園)「社会福祉法人の監査制度とその課題」

 第3会場〔司会:小島廣光氏(北海道大学)〕⑴早坂毅氏(関東学院大学大学院)「非営利組織の現物寄附と現状分析—NPO法人100件を分析して—」、⑵丸山真紀子氏(久留米大学病院)「e—ヘルスネットワークについての一考察—データー利用を中心にして—」、⑶吉田忠彦氏(近畿大学)「NPO支援センターのタイプ別機能特性」

 第4会場〔司会:江田寛氏(公認会計士)〕⑴王妹三氏(九州産業大学大学院)「非営利組織における収支計算書の問題点—目的と基本概念—」、⑵江頭幸代氏(広島商船高等専門学校)「営利企業の非営利活動の研究—とくに環境コストとライフサイクル・コスト—」、⑶関口博正氏(神奈川大学)「公会計における非交換取引(Non—Exchange Transaction)の認識と測定—運営費交付金等の処理を中心にして—」

2 研究部会報告
 大矢知浩司氏(九州産業大学)の司会により、以下の3報告が順次行われた。
⑴東日本研究部会〔主査・小島廣光氏(前出)〕「NPO、政府、企業間の戦略的パートナーシップ」
⑵西日本研究部会〔主査・吉田忠彦氏(前出)〕「地域と非営利組織のマネジメント」
⑶特別研究部会〔主査・石崎忠司氏(中央大学)〕「公益法人の財源(贈与・遺贈等)に関する多角的検討」
 午後に入り、会員総会では、報告事項・審議事項すべて原案どおり承認されたが、その結果、会則改定により本学会が「非営利法人研究学会」に改称されることとなった。また、2005年学会賞・学術奨励賞の選考結果が報告され、本年の学会賞は、該当作なし、学術奨励賞は、吉田初恵氏(前出)「介護保険制度改革に向けての論点」が受賞、本賞と副賞が授与された。

3 統一論題報告と討論
 「非営利組織の今日的課題と展望—新しい『非営利法人制度』も視野に入れて—」をテーマとして、杉山学氏(青山学院大学)の司会の下に、次の4氏により行われた。
⑴藤井秀樹氏(京都大学)「非営利組織の制度進化と新しい役割」
 藤井氏の報告では、まず、わが国における非営利組織の制度進化のプロセスが、比較制度分析の手法を用いて明らかにされた。これを踏まえ、公益法人制度改革における未解決の問題として、(a)公益性の判断基準の不明確性、(b)モラル・ハザードの可能性、(c)公益性と市場原理の関係の未整理といった点が提起され、その解決のためには、成果重視型マネジメント及び非営利組織を財務面で有効に支援しうる優遇税制が必要であるとの指摘がなされた。
⑵島田恒氏(京都文教大学)「非営利組織の失敗—その原因と予防装置—」
 島田氏は、非営利組織の本質に属する要因から派生する失敗に焦点を合わせ、その原因と予防措置を検討した結果、「外部評価の機会の希薄性」という本質から、非営利組織の失敗(「クライアント視点の欠如」、「競争市場への埋没」)が生み出されるとし、その予防措置として、「絶えざるミッションの問い直し」の下での「適切なガバナンス」、「行政や企業との協働」を提言した。
⑶山岡義典氏(法政大学)「公益法人制度改革で何が変わるか」
 山岡氏は、公益法人制度改革の現状を踏まえ、新しい法人制度・税制の要点及び新しい非営利法人制度とNPO法人制度の関係の行方を展望する報告を行った。その中で、特に法人制度では新たな非営利法人の解散時の財産帰属及び公益性の認定、税制では公益性の認定による課税環境の激変が要点であると強調、新しい非営利法人制度とNPO法人制度の関係については、NPO法人よりも新しい非営利法人のほうが選好され、やがてNPO法人制度が新しい非営利法人制度に統合されるのが望ましいとの見解を表明した。
⑷成道秀雄氏(成蹊大学)「非営利法人課税制度への提言」
 成道氏の報告では、「公益法人制度改革の基本的枠組み」に基づき公表された「新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制についての基本的考え方」に検討が加えられ、新たな非営利法人課税制度への問題提起が行われた。そのうえで、「公益性判断」に関して具体的で形式的な判断基準が必要であること、「収益事業課税」に関して特掲収益事業を廃止し原則課税とすべきこと、「寄附金控除制度」に関しては政府による事業活動への干渉に対して十分な配慮がなされるべきであり、自由な公益活動を阻害してはならないことが提言された。
 4氏の報告後、多数の会員から寄せられた質問への回答を基に、さらにフロアの会員と報告者の間で議論が展開され、活発な討論が行われた。
 統一論題報告・統一論題討議終了後、神奈川大学ラックスホールにて懇親会が開催された。本学会会長松葉邦敏氏(成蹊大学)の挨拶があり、懇親会は終始和やかな雰囲気の中19時散会した。