第8回大会記

青山学院大学 杉山 学 
(2004.9.3-4 九州産業大学)


統一論題 1 NPO法人のガバナンス
2 非営利組織の活動状況の開示
3 公益法人会計基準の改訂と今後の課題
4 非営利組織のガバナンスとアカウンタビリティ


 公益法人研究学会第8回全国大会は、2004年9月3日(金)・4日(日)の両日、九州産業大学において開催された。第1日目は理事会が開催され、第2日目は報告および討議が行われた。紙幅の関係上、統一論題報告の要約と自由論題報告者・報告テーマ、研究部会報告者・報告テーマを紹介することにする。

⑴ 統一論題報告・統一論題討議
  「非営利組織のガバナンスと活動のディスクロージャー」を統一論題のテーマとして下記の報告が行われた。

小島廣光氏(北海道大学)「NPO法人のガバナンス」
  小島氏は㈰マネジメント、㈪内部ガバナンスおよび㈫外部ガバナンスについて財団法人とNPO法人を比較検討し、特に5つの視点からNPO法人の外部ガバナンスの特徴を明らかにされた。そして外部ガバナンスは、マネジメントの自発性・自律性をより尊重すると同時に、その透明性を求めており、NPO法人の存続・成長の不可欠の要件としてこのような外部ガバナンスの重要性を主張された。

梅津亮子氏(九州産業大学)「非営利組織の活動状況の開示—財団法人鉄道弘済会および医療法人静寿会の事例を中心として—」
  梅津氏は、財団法人鉄道弘済会の事業報告について官報を、また医療法人静寿会の事業報告については、梅津氏がその作成に直接関わった活動報告書を検討し、公益法人における活動(事業)報告書の重要性を強調された。

加古宜士氏(早稲田大学)「公益法人会計基準の改訂と今後の課題」
  加古氏は、平成15年3月28日に公表された「公益法人会計基準(案)」(公益法人会計基準検討会:座長加古宜士氏)の特徴を、特に財務諸表の体系について、広く一般の国民に対する分かり易い外部報告の充実という視点から、予算や決算といった法人のガバナンスに係る計算書類(収支計算書)は外部報告の財務諸表から除外し、損益計算書と同様な正味財産増減計算書(フロー式)を原則とすること、また寄付者の意図を明確にするため正味財産を二区分した点などを明らかにされた。

堀田和宏氏(近畿大学)「非営利組織のガバナンスとアカウンタビリティ」
  堀田氏は、組織と経営者がプログラム—パフォーマンス測定・評価の視点や評価基準を自ら設定して「自己評価をする枠組み」を設定すること、さらにパフォーマンス評価を多次元の視点から「外部評価をする枠組み」を設定することの重要性を明らかにし、特に経営者の経営倫理の確保と社会的評価の枠組みの設定が求められることを主張された。
  以上の報告に対し、興津裕康氏(近畿大学)の司会により、出席者からの多岐にわたる質問がなされ、活発な質疑応答を通して報告者の主旨が明確となり、出席者全員にとって有意義なひと時となった。

⑵ 自由論題報告
  報告者および報告テーマは次の通りである。
第1会場:司会・藤井秀樹氏(京都大学)
野口房子氏(県立長崎シーボルト大学)「高齢社会政策の二国間比較—日本とスウェーデン—」
依田俊伸氏(国士舘大学)「医療法人における出資と非営利性—最高裁平成15年6月27日決定を手がかりにして—」
成道秀雄氏(成蹊大学)「認定NPO法人の認定要件の検討」
第2会場:司会・小宮 徹氏(公認会計士)
用丸るみ子氏(税理士)「地域開発と公益活動のバランス」
吉田初恵氏(関西福祉科学大学)「介護保険制度改革に向けての論点」
北沢紀史夫氏(財団法人日本医薬情報センター)「日本医薬情報センターにおけるガバナンスの実際」
第3会場:司会・齋藤真哉氏(青山学院大学)
于 佳氏(九州産業大学大学院)「多国籍企業現地子会社の情報開示—現地国との調和—」
原田 隆氏(独立行政法人産業技術総合研究所)「公的アカウンタビリティと業績評価」
高橋選哉氏(吉備国際大学)「非営利組織体の活動報告」
西村友幸氏(釧路公立大学)「アソシエーションの中の官僚制—厚生労働省所管の社団法人における職員数の規定因—」
第4会場:司会・松倉達夫氏(ルーテル学院大学)
桜井政成氏(東京福祉大学)「非営利組織における理事会の義務と役割に関する理論的考察」
東郷 寛氏(バーミンガム大学大学院)「イギリス住宅協会の経営戦略」
橋本俊也氏(税理士)「非営利組織体の会計目的とディスクロージャー」
吉田忠彦氏(近畿大学)「中間支援組織の類型と課題」

⑶ 研究部会報告
司会・原田満範氏(岡山商科大学)
東日本研究部会:主査・小島廣光氏(北海道大学)
  「NPO,政府,企業間の戦略的パートナーシップ」
西日本研究部会:主査・吉田忠彦氏(近畿大学)
  「地域と非営利組織のマネジメント」
  なお、次年度は、松葉邦敏会長のもと(石崎忠司氏(中央大学)および成道秀雄氏(成蹊大学)が推進役)に設置された「公益法人の財源(贈与・遺贈等)に関する多角的研究」をテーマとした特別研究部会の報告が予定されており、その成果が期待される。

⑷ 第3回学会賞・学術奨励賞
  学会賞には小島廣光氏(北海道大学)の著作『政策形成とNPO法—問題,政策,そして政治』(有斐閣、2003年11月)が選定された。なお、今次は学術奨励賞は該当者なしであった。
  4日には大会準備委員会のご尽力により、参加者は人間国宝十四代酒井田柿右衛門九州産業大学大学院芸術研究科教授の指導のもと「柿右衛門様式窯・窯開き」に立ち会う貴重な経験をさせて頂いたことを記して感謝申し上げたい。