第4回大会記

神戸学院大学 戸田博之 
(2000.10.6-7. 神戸学院大学)


統一論題 あらためて『公益』を問う


 2000年10月6日(金)の理事会に続いて、10月7日(土)午前10時から公益法人研究学会第4回全国大会が神戸学院大学(神戸市西区伊川谷)において開催された。約70名(うち、非会員の公認会計士15名)の参加者を得て、活発な報告と討論が展開された。ちなみに本大会は、日本公認会計士協会によるCPE研修指定を受けた。

 本大会は、今世紀最後の全国大会であるという基本認識のもとに、統一論題は「あらためて『公益』を問う」と定められた。その意図するところは、わが公益法人研究学会こそ、来るべき21世紀に社会から最も付託を受ける学会であろうという使命感と誇りを持って、改めて本学会設立時の初心に立ち返ることにあった。

 自由論題報告は、11号館2階の3会場で行われた。まずA会場(司会:松倉達夫氏)では、吉田初恵氏(関西女子短期大学)、千葉正展氏((株)福祉会計サービスセンター)、B会場(司会:松葉邦敏氏)では、依田俊伸氏(国士舘大学)、鷹野宏行氏(白鴎大学)、C会場(司会:小島廣光氏)では、後 千代氏(東邦学園短期大学)、川野祐二氏((財)助成財団センター)の6氏による報告が行われ、それぞれ熱心な質疑応答がなされた。

 会員総会に先だって、公益企業論研究の権威である佐々木 弘先生(前公益事業学会会長 現神戸大学大学院経営学研究科教授)による「規制緩和・競争導入と公益」と題する記念講演(司会:興津裕康氏)がなされた。ちなみに、統一論題の座長である杉山 学氏(青山学院大学)の言を借れば、「佐々木先生が話された、国民の合意に基づく『ユニバーサル・サービス・オブリゲーション』こそが公益法人の基幹となる概念である、という強い印象を受けた。」

 統一論題「あらためて『公益』を問う」は、司会・座長=杉山 学氏のもとに、吉田忠彦氏(近畿大学)、渋谷幸夫氏(社会福祉法人常成福祉会)、岡村勝義氏(神奈川大学)および大矢知浩司氏(九州産業大学)による個別報告が行われ、引き続き討論が行われた。なお、上記4氏による報告内容は、自由論題6氏の研究報告とともに、いずれも本学会誌VOL..3に掲載されることになっている。

 統一論題討論会では、上記4氏による個別報告、「公益活動の舞台としての公益法人」(吉田氏)、「今日的視点から見た『公益』の多様性」(渋谷氏)、「公益法人の公益性−情報公開の視点から−」(岡村氏)および「非営利組織の有効性と能率性の測定・評価」(大矢知氏)について質疑応答がなされ、予定時間をオーバーする熱心な討論が繰り広げられた。なお主な質問者は、次のとおりである。

 島田 恒氏(龍谷大学)、千葉正展氏((株)福祉会計サービスセンター)、薄井正徳氏((財)目黒寄生虫館)、石崎忠司氏(中央大学)、松葉邦敏氏(国士舘大学)、川野祐二氏((財)財成財団センター)、亀岡保夫氏(公認会計士)、武田昌輔氏(成蹊大学)

 統一論題質問用紙に記された主な論点は、⑴公益概念:明確化と多様化、⑵公益法人の存在範囲・位置付け:NPOおよび行政との関係、⑶あるべき情報開示:業績評価を含む情報開示の有効性および開示情報の透明化・明確化 に大別できた。その内容をつぶさに紹介することはできないが、終了時間間際の武田昌輔氏の熱のこもった次のような質問を紹介することは、討論の締めくくりとして有益であろう。

 「この統一論題において、“あらためて『公益』を問う”とありますが、この問題を明確にする目的は、『真の公益法人』を厳格に規定しようということにあると思われます。そこで、公益法人に対しては、主として国・地方公共団体等が援助するということが前提となっていると考えます(補助金、税制上の措置)。いかがでしょうか?」
 この質問に対して座長である杉山 学氏は、時間の関係でこの重要な論点について充分な討議がなされなかったことを遺憾であったとされ、のちに次のような感想を寄せられた。
 「武田先生の上記のご質問は、公益法人の本質について『真の公益法人』という表現で問われたものと思います。私自身は、公益法人の諸活動は、本来、採算を考慮して行われるべきものではなく、佐々木先生と同様に、『ユニバーサル・サービス・オブリゲーション』として必要と認められる社会全体の合意に基づくものであると考えております。したがって公益法人の支出は、営利企業の費用のように収益獲得のための犠牲という性格のものではありません。もちろん、貴重な資源を目的達成のために有効的に消費することは当然のことであります。しかし問われていることは、社会的批判に耐え得る活動をしているかということだと思います。会計の領域に関するならば、一般目的の外部財務情報はそのための手段であり、その中心は予算にあるのではないでしょうか。」

  統一論題報告・討論の終了後、大学会館内職員レストランにおいて懇親会が開催された。まず、準備委員長戸田博之氏(神戸学院大学)による挨拶に続いて、開催校を代表して神戸学院大学・谷口弘行学長の歓迎の辞および本学会会長・守永誠治氏(静岡産業大学)による謝辞のあと、武田昌輔氏の発声で乾杯、非会員(公認会計士)も交えてのなごやかな雰囲気のうち、20時30分散会した。