第1回大会記


(1997.10.4 青山学院大学)


統一論題 公益法人研究の現状と課題—公益法人研究の原点を巡って—
1 非営利セクターとしての公益法人の戦略行動
2 公益法人会計の問題点と改質向上への一考察
3 社会福祉法人会計の本質


 公益法人研究学会(会長:守永誠治氏)の第1回大会は、1997年10月4日、青山学院大学青山キャンパスの11号館において開催された。
 統一論題「公益法人研究の現状と課題─公益法人研究の原点を巡って─」のもと、興津裕康氏(近畿大学)の総合司会により二題の研究報告並びに討論が行われた。
 また、自由論題の報告と記念講演も併せて行われた。


1 非営利セクターとしての公益法人の戦略行動

報告:吉田忠彦氏(近畿大学豊岡短期大学)


 吉田氏は「非営利組織としての公益法人の戦略行動《と題し、公益法人を非営利セクターの中核として捉えた上で、その経営戦略を規定する要因と戦略の類型について報告された。すなわち、非営利組織は①自ら掲げる使命遂行を目的とするが、②一方では組織の存続・拡大の慣性も働き、マクロ的には③組織の生存領域及び規模は政府(主務官庁)の調整に大きく影響される、と分析。そうした環境に適応するために、非営利組織は事業構造の戦略、競争の戦略、協調戦略をとるべきだと強調した。ただ、それらの戦略は、サービスの受け手だけでなく、支払い手となる多様な関連他者からのフィードバック情報に基づいて策定されるため、吊声獲得や協調戦略が重視されなければならないと主張された。


2 公益法人会計の問題点と改質向上への一考察—アメリカ非営利法人会計基準との比較—

報告:若林茂信氏(東京経営短期大学)


 若林氏は「公益法人会計の問題点と改質向上への一考察《と題して報告された。この中で氏は現在国際的に最高の水準にある、私的セクターに属する非営利法人を対象としたアメリカの会計基準の発展の軌跡から現状を展望、その顕著な特色として12項目を抽出。このうち、日本の公益法人(広義に想定)会計を改質向上させるために適切と思われる8項目を教訓として選定され、これを公益法人会計の問題点を考察する上での好個の研究資料として活用すべきであることを主張された。


3 社会福祉法人会計の本質—施設会計を中心として—

報告:松倉達夫氏(中部女子短期大学)


 松倉氏は自由論題として「社会福祉法人会計の本質《をテーマに、特に施設会計を中心に報告された。現在社会福祉法人に適用されている経理規定準則は1976年に発表され、それ以前の会計指針に比して近代化し、改善されたが、なお実務上問題があることを、氏は次の事項を掲げて本質を追究し、問題点の理論的な指摘がなされた。①消費経済体、②受託者会計、③複式簿記の徹底、④発生主義会計、⑤経理責任の明確化、⑥管理組織の確立、⑦予算の重要性、⑧収支計算書と貸借対照表。


 以上の報告のほか、統一論題を総括するパネルディスカッションが開かれ、松葉邦敏氏(成蹊大学)を座長として、報告者の吉田氏、若林氏に白井万佐夫氏(公認会計士)、永島公朗氏(産能短期大学)、朊部信男氏(産能短期大学)がパネラーとなり、大会参加者を交えて活発な討論が展開された。
 また、今大会では武田昌輔氏(成蹊大学)が「公益法人課税の史的変遷と今日的課題」と題して記念講演をされ、大会に華をそえた。
 この後、会場を青学会館に移して懇親会が催され、青山学院大学を代表して経営学部長の杉山学氏が挨拶、会田一雄氏(慶應義塾大学)による乾杯の発声があり、会員の親睦と学会の今後の発展を祈った。